最近、東京都練馬区のある公立小学校で起こった“27円のユニセフ寄付”が思わぬ波紋を広げています。一見すると些細な金額に見えるこのニュース。しかし、そこに保護者たちが感じたのは「金額」ではなく「手続き」の問題でした。
事の発端:27円の“謎の支出”
問題が発覚したのは、2024年3月中旬。ある保護者のもとに届いた決算書に「ユニセフ募金 27円」という記載があったことがきっかけです。この27円は、子どもたちの教材費として徴収されたお金の余剰分でした。
教材費といえば、ドリルや副教材など、授業に必要な学用品の購入を目的に、保護者から年額で集められる費用です。2024年度にこの小学校で集められた総額は117万2736円。その端数の27円がユニセフに寄付されていたというのです。
しかしこの寄付、事前に保護者への説明や了承は一切なかったとのこと。「たった27円」と一蹴するには難しい、根本的な“説明責任”の問題が浮かび上がってきました。
保護者の声:「金額の問題ではない」
この問題に異議を唱えた保護者の一人は、メディアの取材にこう語っています。
「金額の大小の話ではない。事前に何の説明もなく、勝手に寄付されたことに不信感がある。」
この言葉からも分かるように、寄付自体を否定しているわけではありません。問題の本質は、「保護者から預かったお金を、学校側が説明なく他の目的に使った」という点にあるのです。例えるなら、財布を預けた相手が、返しきれなかった1円を「勝手に誰かにあげた」と知った時の感覚に近いかもしれません。
教育委員会の見解と学校側の対応
練馬区教育委員会では、学校が集めた教材費などの“学校徴収金”の取り扱いに関するガイドラインを定めています。そこでは「余剰金は原則として保護者に返金すべき」と明記されており、返金が難しい端数についてのみ「公的募金へ入金する等」と例示されています。
今回のように、説明なしで寄付を行うことは明確にガイドライン違反です。教育委員会はこの件について「学校の落ち度」とし、指導を行いました。
該当する小学校の副校長は取材に対して「事前説明を失念していた」と謝罪し、「今後は全校で説明の徹底を図る」と話しています。
また、2025年度の教材費案内には「返金できない残金が発生した場合は募金させていただきます」と明記し、透明性を意識した対応が取られるようになったとのことです。
他区の対応はどうなのか?
隣接する中野区では、保護者の同意を前提として端数の寄付が選択肢の一つとして示されているそうです。これまで大きな問題にはなっておらず、「記憶の限りでは保護者からの苦情はない」とのこと。
一方、板橋区では端数の取り扱いについて教育委員会が特別なルールを示していないものの、「寄付をしている学校もある」という事実が確認されています。
つまり、“端数の寄付”自体は珍しいことではありませんが、その手続きと説明の仕方が重要だということが、この件で明確になったと言えるでしょう。
どこの小学校なのか?
記事では、具体的な学校名は明らかにされていません。しかし、報道内容から“練馬区内の公立小学校であり、1年生の教材費に関わる問題である”ということがわかります。
ネット上では、該当校を特定しようとする動きもあるようですが、教育的観点や子どもたちの安全を考慮すると、過剰な詮索は避けるべきです。
最後に:信頼を育てるために必要なこと
この一件は、たった27円の寄付がきっかけで、学校と保護者の間にある“信頼の構造”が問われた出来事でした。金額ではなく、誠意と説明がなければ信頼は築けない。これは学校に限らず、あらゆる人間関係にも通じる話ではないでしょうか。
たとえば、友人にお金を預けたら、使い道の説明があるのが当然です。ましてや公的機関が扱うお金なら、なおさら慎重な運用と説明責任が求められるのです。
今回の問題を教訓に、学校現場でもより一層の説明と対話が大切にされていくことを期待したいと思います。
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