漫画『ストップ!!ひばりくん!』『すすめ!!パイレーツ』などで知られる人気漫画家・江口寿史(えぐち ひさし)さん。
80年代から日本のポップカルチャーをけん引してきたレジェンドですが、2025年に入りSNS上でトレース(トレパク)疑惑が浮上。
さらに、江口さんが手掛けたイベントビジュアルが一時撤去される事態に発展し、ファンや業界関係者を巻き込む大騒動となりました。
この記事では、江口寿史さんのトレパク疑惑の経緯から、「中央線文化祭2025」ビジュアル撤去の背景、そして“何が問題だったのか”を詳しくまとめます。
■ 江口寿史とは?日本の漫画とイラスト文化を作った男
項目 | 内容 |
---|---|
名前 | 江口 寿史(えぐち ひさし) |
生年月日 | 1956年3月29日 |
出身地 | 熊本県水俣市 |
代表作 | 『ストップ!!ひばりくん!』『すすめ!!パイレーツ』 |
職業 | 漫画家・イラストレーター |
活動開始 | 1977年 |
主な受賞歴 | 日本漫画家協会賞優秀賞など |
1980年代、“シャープな線とファッション性の高いキャラクター”で注目を集めた江口寿史さん。
漫画界だけでなく広告・CDジャケット・雑誌など、幅広い分野でビジュアル表現の先駆者として活躍してきました。
しかしその一方で、2025年秋、思わぬ形で世間の注目を浴びることになります。
■ 発端は「中央線文化祭2025」告知ポスター
2025年10月、JR荻窪駅内のルミネで開催予定のイベント
「中央線文化祭2025」 の告知ポスターが問題の発端となりました。
江口寿史さんが手掛けた女性の横顔イラストが、
Instagramで活動するモデル・金井球(かなえ・たまき)さん の写真と酷似していたのです。
SNS上では比較画像が拡散され、
「完全にトレースでは?」
「江口先生ほどの人がこんなことを?」
と炎上状態に。
その後、江口さん本人がX(旧Twitter)で以下のように説明しました。
「インスタに流れてきた完璧に綺麗な横顔を元に描いたものですが、
ご本人(金井球さん)からご連絡をいただき、
直接やり取りの上で承諾を得ました。
そのため、該当ビジュアルを再公開します。」
つまり、江口さんは“参考にした写真の本人と直接連絡を取り、許可を得た”という対応を取ったわけです。
■ モデル本人もコメント「誠実に対応していただいた」
モデルの金井球さんもXで次のように投稿しています。
「私の横顔が知らないうちに大きく荻窪駅に……!? と驚きましたが、
江口先生から直接ご連絡をいただき、誠実にご対応くださいました。
(ほくろを描き足してくださったりなど、丁寧に扱っていただきました)」
さらに、
「私は私であり、人間としてさまざまな権利を持っています。
この件を通じて、“創作と肖像の関係”を考える機会になりました。」
と、自身の立場も冷静に表明しています。
お互いが誠実に対応したように見えました。
しかしながら、炎上の勢いは止まらず事態は別の方向へ動き始めます。
■ ルミネ荻窪がビジュアルを「一時撤去」
騒動が拡散した当日、「中央線文化祭2025」を主催するルミネ荻窪が異例の対応を発表しました。
「制作過程に問題があったと判断し、
必要な確認が完了するまでの間、該当ビジュアルを一時的に撤去いたします。」
この声明により、駅構内に掲示されていた大型ポスターや広告が一斉に取り外されました。
SNSでは「撤去までいくのは過剰では?」との声も上がる一方で、「企業としてはリスク管理の観点から当然」という意見もあり、賛否が分かれました。
■ 他企業にも波及 ― Zoffとデニーズも声明発表
さらに火の粉は他企業へ。
江口寿史さんが過去にイラストを提供していた
メガネブランド「Zoff」 や ファミリーレストラン「デニーズ」 までもが声明を発表。
● Zoffの声明(10月4日)
「江口寿史氏とのキャンペーン企画で使用されたイラストについて、
多くの皆様にご心配とご迷惑をおかけしております。
現在、事実関係を精査しております。
確認が取れ次第、改めてご報告いたします。」
● デニーズの声明(同日)
「当社広告に使用したイラストの制作過程について確認作業を進めております。
関係者の皆様にご不安をおかけし、深くお詫び申し上げます。」
つまり、今回の“トレース疑惑”は一つのポスターだけでなく、
過去の江口作品全体にまで検証の目が向けられている のです。
■ SNS時代における“拡散の速さ”が炎上を拡大
今回の騒動を加速させたのは、まさにSNSの拡散力です。
かつては参考資料や写真の使用経緯が一般に知られることはほとんどありませんでしたが、
現代ではAI画像検索やユーザーによる検証文化によって、
「似ている作品」はすぐに特定されてしまいます。
その結果、
「説明がない=盗用では?」という早合点が広がり、
真相が見えないまま炎上するケースが増えているのです。
江口さんのように著名なクリエイターであればなおさら、
“透明性の欠如”が信頼を揺るがす要因となってしまいました。
■ ファンと業界の反応
江口寿史さんは長年にわたり多くの若手クリエイターに影響を与えてきた存在。
そのため、ファンの反応も複雑です。
「まさか江口先生が…」「尊敬していただけにショック」
「でも誠実に対応していて好印象」
と、落胆と擁護が入り混じる状況。
一方、同業のイラストレーターからは、
「“参考画像を使うこと”自体は問題ではないが、
出典を明示しないことが誤解を招く」との指摘も上がっています。
■ クリエイター倫理と著作権意識 ― 今後への教訓
この騒動は創作における倫理と透明性の重要性を浮き彫りにしました。
SNS時代においては、
- 参考にした素材の出典を明示する
- モデル本人の同意を得る
- オリジナル性を担保する
といった行動が、プロ・アマ問わず求められています。
文化メディア『COKI』でも、
「“インスピレーション”と“コピー”を混同すれば、
創作文化全体の信頼が揺らぐ」
と指摘。
江口寿史さんのケースは、業界全体に対する警鐘ともいえるでしょう。
■ まとめ:江口寿史騒動が問いかける“創作の信頼”
- 江口寿史さんのイラストがSNSでトレース疑惑に
- モデル本人が確認し、承諾を得て再公開
- しかし企業側が自主的にビジュアルを撤去
- 他企業にも影響が拡大し、声明が相次ぐ
- 問題の本質は「著作権」よりも「説明不足と透明性」
個人的には江口さんのイラストに以前から感銘を受けており、素晴らしい作品をリリースしている希有な芸術家だと思っています。
できるだけ早く問題が沈静化することを祈るばかりです。
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