テレビ番組『ザ・ノンフィクション』で20年以上にわたって密着取材された人物――それが、大森昌也（おおもり・まさや）さんです。
農村での自給自足生活を“暮らしの哲学”として徹底的に実践した彼は、多くの視聴者にとって、どこか懐かしく、けれど極端にも思えるライフスタイルを提示してきました。
この記事では、大森昌也さんの経歴や学歴、思想背景に加え、妻や子どもたちとの関係、自給自足を選んだ理由、そして最期の日々までを時系列にまとめていきます。
■ 大森昌也とは何者か？プロフィールと経歴まとめ
- 名前：大森 昌也（おおもり まさや）
- 生年：1942年（昭和17年）3月生まれ
- 出身地：詳細非公開（関西圏と推測される）
- 職業：自給自足農家、執筆家、元国鉄職員
- 居住地：兵庫県朝来市「あ〜す農場」
- 没年：2016年（享年74）
彼はもともと、国鉄に勤務するサラリーマンでした。しかし、大量消費社会の在り方に強い疑問を抱き、1997年、55歳のときに妻と子どもを連れて兵庫の山奥へと移住を決意します。
移住後の暮らしでは、電気やガス、水道といったライフラインに頼らず、作物の栽培、狩猟、炭作り、保存食の仕込みなど、生活のあらゆる面を「自分の手」でまかなうスタイルを貫きました。
■ 自給自足を選んだ理由｜“百姓”という生き方の再定義
「百姓とは、百の仕事をする者」という思想に強く共鳴した大森さん。
現代において“百姓”という言葉は古臭く感じられるかもしれませんが、彼にとってはそれが最も実践的で自由な生き方でした。
◯ 文明社会へのアンチテーゼ
彼は著書や講演などで、たびたび次のようなメッセージを発しています。
「便利さの裏にあるものを見よ。自然から遠ざかるほど、人は不自由になる。」
このように、大森さんは都市化や消費中心の社会に強い疑念を持ち、それに依存しない暮らしを自らの身体で証明していこうとしたのです。
◯ 実践の場「あ〜す農場」
山中に構えた「あ〜す農場」は、単なる生活拠点ではなく、思想を実践する“実験場”でもありました。ここでは訪問者や若者との交流も多く、いわばオルタナティブな生活共同体のモデルケースとして機能していたのです。
■ 学歴と職歴｜国鉄勤務から農の道へ
学歴に関しては明確な情報はありませんが、大森さんは元国鉄職員として一定の安定収入を得ていた期間があったことから、高校または専門学校卒と推察されています。
勤務先の国鉄では、労働運動などにも関わっていたとされており、社会的問題への意識の高さと実践志向の強さが垣間見えます。
この経験が、後に「社会に頼らずに生きる」という信念を育てたとも言えるでしょう。
■ 家族構成｜妻・6人の子どもたちと築いた共同体
◯ 元妻との関係
大森さんは、国鉄時代に出会った女性と結婚。その後、兵庫県朝来市の山村へと一家で移住します。しかし、自給自足の厳しさと理想主義に対するギャップから、妻は後に山を離れる決断をします。
とはいえ、最期の瞬間まで大森さんの心に彼女への想いがあったことが記録されています。死の間際に「会いたい」と願ったのは、かつて共に山を築いたその妻でした。
◯ 6人の子どもたち
夫婦の間には6人の子どもが誕生し、それぞれが自然の中でたくましく成長していきました。
- 長男：ケンタさん
- 次男：げんさん（現在は結婚し、独立農家として活動）
- 三男：ユキトさん
- 長女：ちえさん
- 双子の娘：れいさん、あいさん
子どもたちは、いわゆる義務教育を受けず、**山での労働を通じて「生きる知恵と倫理観」**を身につけていきます。たとえば、鶏や猪の命を扱う場面では、生死に対する理解や命の重みを体で覚えていったのです。
■ 子育てと教育哲学｜「生きる力」が最優先
大森さんの教育方針は極めてシンプルでありながら、強い哲学に貫かれていました。
- 「勉強より、まず“生きる”ことを学べ」
- 「自然が一番の教科書であり、命が最良の先生」
学校に通わせるか否かは、親が決めるのではなく子ども自身の意思を尊重するというスタンスをとっていました。この考えは時に極端と批判されましたが、“自己決定と自己責任”という姿勢を徹底的に教えるための教育実践だったのです。
■ 晩年と死因｜自然とともに生き、そして還る
長年にわたる労働と自然環境の中での暮らしは、大森さんに強靭な精神と肉体を与えましたが、加齢とともに病が彼を襲います。
晩年に判明したのは「上顎洞がん」。2015年頃から闘病を続け、2016年3月14日、子どもたちと元妻に見守られながら、静かに息を引き取りました。
「自然の一部である以上、病や死も抗うものではない」と彼は語っていたそうです。
■ 遺されたもの｜思想は子どもたちに継承されていく
次男のげんさんは現在、兵庫県の山中にて「山の一家＊葉根舎（はねや）」という新たな暮らしを築いています。父の哲学を受け継ぎながらも、自分たちの方法で自然との共生を目指しており、父の“思想の実践者”として生きています。
他の子どもたちもそれぞれの道を選び、都会へ出て就職したり、別のライフスタイルを選んだりしていますが、**「自分の人生は自分で選ぶ」**という父の教えは、彼らの中で生き続けています。
■ 大森昌也の残したメッセージ｜「便利＝幸福」ではない
現代社会では、“便利さ”や“効率”がしばしば幸福の代名詞のように語られます。しかし、大森さんはその真逆を生きました。
- 自分で食べ物を育てること
- 自分の手で火を起こし、水を引くこと
- 命の誕生と終わりに立ち会うこと
これらを通じて、**「人間とは何か」「本当の豊かさとは何か」**を追求してきたのです。
■ まとめ｜現代人に問いかける“選択の自由”
大森昌也さんの人生は、誰にでも真似できるものではありません。しかし彼の生き様は、私たちが今いる場所で“できること”を考え直すヒントをくれます。
- 地元の野菜を選ぶ
- コンポストを始めてみる
- 子どもと一緒に野外で過ごす時間を増やす
このような一歩が、大森さんの遺した“暮らしの哲学”への共鳴であり、次世代への小さな継承なのかもしれません。
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