2025年、世界的な科学賞であるノーベル化学賞を受賞した日本人科学者・北川進(きたがわ すすむ)氏。
二酸化炭素(CO₂)などの気体を効率的に捕捉・貯蔵できる「多孔性金属錯体(PCP)」を開発し、環境技術の新たな地平を切り開いたその業績は、国内外で高く評価されています。
ここでは、彼の生い立ちから学歴、研究経歴、そして家族についての情報までを、分かりやすく丁寧にまとめました。
幼少期と出身地:京都の町で育まれた探求心
北川進氏は1951年7月4日、京都市下京区に生まれました。
古都・京都の文化的な空気に包まれた環境で育ち、幼いころから理科や化学に強い関心を持っていたそうです。
特に、自然現象や物質の成り立ちに対する素朴な疑問が、後の科学者としての道を歩む原点となりました。
学歴:すべての始まりは京都大学から
北川氏は地元の京都市立塔南高等学校を卒業したのち、京都大学工学部石油化学科に進学しました。
1974年に学部を卒業後、同大学の大学院に進学。
1979年には工学研究科博士課程を修了し、工学博士の学位を取得しています。
この時期に、分子構造や金属との結合について深く学び、後にノーベル賞受賞につながる独自の研究テーマに出会うこととなります。
研究者としてのキャリアの始まり
博士課程修了後、北川氏は近畿大学理工学部にて助手としてのキャリアをスタート。
そこから講師、助教授と順調に昇進し、教育・研究の両立を続けながら基礎化学の研究に取り組んでいました。
1992年には東京都立大学(現・首都大学東京)理学部の教授に就任し、本格的に研究者としての名を上げることになります。
金属と有機物を融合した新たな構造体「配位高分子(MOF)」の開発は、ここから加速していきました。
京都大学での飛躍:iCeMSの拠点長として
1998年、母校・京都大学へ戻り、大学院工学研究科の教授として着任。
その後、2007年には新たに設立された**物質-細胞統合システム拠点(iCeMS:アイセムス)**の副拠点長に就任し、2013年からは拠点長として研究を牽引する立場となりました。
このiCeMSは、物質科学と生命科学の融合を目指す革新的な研究施設であり、北川氏の多孔性配位高分子の研究もこの環境で大きく進展。
世界中の研究者から注目を集めるようになったのです。
PCP(多孔性金属錯体)の開発とその意義
北川氏がノーベル賞を受賞するきっかけとなったのが、「多孔性金属錯体(PCP)」の合成と応用研究です。
この材料は、活性炭やゼオライトと同様に無数の微細な孔を持ち、特定の気体分子を効率よく吸着・分離する性質があります。
北川氏は、金属イオンと有機物を精密に組み合わせることで、ナノスケールの空間を制御できる構造体を構築しました。
この技術により、CO₂をはじめとする温室効果ガスの捕捉・再利用・輸送などが実現可能となり、気候変動対策や産業用途における革新が期待されています。
数々の栄誉と国際的評価
北川氏の業績は国内外で広く認められており、以下のような数々の賞や栄典を受賞しています。
- 日本化学会賞(2009年)
- 紫綬褒章(2011年)
- 江崎玲於奈賞(2013年)
- 日本学士院賞(2016年)
- フンボルト賞(ドイツ)
- ド・ジェンヌ賞(英国)
- 京都府文化賞 特別功労賞(2025年)
また、2023年には英国王立協会の外国人会員にも選出され、名実ともに世界を代表する化学者のひとりとしてその名を刻んでいます。
ノーベル化学賞受賞(2025年):夢の頂点に立つ
2025年10月8日、スウェーデン王立科学アカデミーは、北川進氏を含む3名にノーベル化学賞を授与することを発表しました。
受賞理由は「金属有機構造体(MOF)の開発」。この分野の研究において、北川氏は理論的構築から応用技術までを包括的に推進した第一人者であり、その功績がついに世界の頂点で認められた瞬間でした。
現在の職務と肩書
現在、北川氏は以下の役職を務めています:
- 京都大学特別教授
- 京都大学物質-細胞統合システム拠点 拠点長
- 京都大学 理事・副学長(2024年4月〜)
- 総合研究推進本部長(2025年1月〜)
研究と教育、大学経営の最前線で活躍するその姿は、後進の研究者たちにとって大きな刺激と希望を与え続けています。
結婚・妻(嫁)・子供など家族構成について
北川氏の私生活に関する情報は、公式な場ではほとんど語られていません。一般的に、学術的な功績が注目される科学者の場合、家族についての情報は非公開であるケースが多く、プライバシーが尊重されています。
ただし、長年にわたり第一線で研究活動を続け、教育や組織運営にも注力してきた彼の姿からは、家庭の支えがあったことは想像に難くありません。妻や子供がいるかどうかの確かな記録は現時点では存在していませんが、親しい関係者の証言などが今後紹介される可能性もあります。
人柄と哲学:静かなる情熱の持ち主
北川進氏の人柄について、教え子や共同研究者たちは「非常に温厚で誠実な人柄」「論理と感性を兼ね備えた指導者」と口を揃えます。派手な演出を避け、研究と静かに向き合う姿勢は、まさに日本的な研究者像の体現者といえるでしょう。
また、「科学は人の役に立ってこそ意義がある」という信念のもと、環境問題への応用など社会課題に真剣に向き合う姿勢も、国内外から尊敬を集めている理由のひとつです。
まとめ:世界に誇る日本人科学者の軌跡
北川進氏は、京都という学術と文化の街で育ち、長年にわたって金属錯体の世界に挑戦し続けてきました。その結果として、ノーベル賞という栄誉にたどり着いたのです。
今後も彼の研究成果は、環境、エネルギー、医療といったさまざまな分野に波及していくと考えられます。
そしてその裏には、家族や仲間、教育機関の支援など、多くの支えがあったことは間違いありません。
彼の歩んできた道は、科学に夢を持つすべての人々にとって、大きなインスピレーションとなることでしょう。
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