関西の朝を彩ってきた読売テレビの情報番組「す・またん!」が、2025年9月30日をもって放送終了することが発表されました。15年にわたり、地域密着型のニュースやエンタメ情報を届けてきたこの番組が、なぜ終わりを迎えることになったのでしょうか?
本記事では、番組終了に至った複数の背景や後継番組の内容、視聴者の反応、そして“関西ローカル番組のこれから”についても詳しく掘り下げていきます。
■ 「す・またん!」とは?15年続いた人気情報番組の概要
「す・またん!」は、読売テレビが2010年から平日早朝に放送していた情報番組。正式名称は「朝生ワイド す・またん!」で、放送時間は月曜〜金曜の朝5時10分からスタート。途中からは日本テレビ系列の「ZIP!」と連携し、一部時間帯で関東向けの番組と接続されていました。
▼ 主な特徴
- ニュース、スポーツ、天気、芸能とバランスの取れた構成
- 関西のグルメや観光情報を発信
- 関西出身タレントやアナウンサーが出演
- 親しみやすい関西弁のトークでファン多数
番組立ち上げ当初から出演していた虎谷温子アナウンサーは、次のようにコメントを寄せています。
「『す・またん!』という番組名を最初に聞いたときの衝撃、初回放送の緊張感、15年間の思い出は忘れられません。当時26歳だった私も今や42歳。この番組と一緒に歳を重ねてきました。」
■ なぜ終わるのか?「す・またん!」終了の主な理由
番組終了には、いくつかの要因が複合的に絡んでいるようです。以下では、特に注目すべき3つの理由を解説します。
① 視聴率の低迷と裏番組との競争
読売テレビにとって最大の課題となっていたのが、朝の時間帯における視聴率競争です。関西では、同時間帯に朝日放送テレビの「おはよう朝日です(通称:おは朝)」が放送されており、長年にわたって激しいシェア争いが繰り広げられてきました。
しかし、「す・またん!」の中心的存在であった辛坊治郎さん、森たけしさんの両名が番組を卒業して以降、個性や番組カラーが薄れたとされ、徐々に「おは朝」に視聴者を奪われるようになりました。
特に「ZIP!」との接続によって東京発の情報が増えると、「関西の情報が見づらい」「中途半端」といった声もあり、地域密着型を重視する関西視聴者とのズレが生じた可能性があります。
② 広告収入の減少と経費削減の影響
ここ数年、全国のテレビ局で広告収入の減少が深刻な問題となっており、ローカル局においては特に影響が大きくなっています。
読売テレビでも例外ではなく、「あさパラS」「ウェークアップ」「今田耕司のネタバレミーティング」など、長寿番組の終了が相次いでいます。こうした流れの中で、「す・またん!」も例外ではなく、自主制作の見直しが進められていたと考えられます。
さらに、読売テレビは2025年春に、名古屋の中京テレビ、福岡放送、札幌テレビと連携を強化し、「読売中京FSホールディングス」として日テレ傘下に実質統合されました。これにより、地方局の個別制作よりも、日テレ制作番組を活用する方向にシフトしているようです。
③ 番組のマンネリ化と時代の変化
15年間続いた番組だけに、一定のフォーマットに視聴者が慣れてしまったという側面もあります。
また、若年層を中心にテレビ離れが進行する中で、「SNSやYouTubeで十分」「朝はラジオやポッドキャストで情報を得る」という視聴習慣の変化も、番組終了の一因と考えられます。
■ 後番組はどうなる?関西でも「ZIP!」フルネット放送へ
「す・またん!」の終了に伴い、2025年10月からは日本テレビ制作の「ZIP!」が関西でも全編放送される形に変更される予定です。
これまでの「す・またん!」の構成では、前半をローカルニュース、後半を「ZIP!」という2部構成でしたが、今後は最初から最後まで「ZIP!」の全国放送内容が関西でも視聴可能になります。
この変更により、
- 制作コストの削減
- 統一した番組編成の実現
- 関西局の人員配置見直し
など、複数のメリットが局側にはあると見られています。
一方で、地域独自の情報や方言を交えた親しみやすい朝の空気感を失うという懸念も広がっており、地域番組の存在意義そのものが問われる局面とも言えるでしょう。
■ 視聴者の声:「寂しい」「ZIPだけでは物足りない」
X(旧Twitter)をはじめとするSNSでは、「す・またん!」の終了を惜しむ声が相次いでいます。
「朝から辛坊さんの毒舌が聞けなくなって残念」
「ZIPだけだと情報が物足りない。す・またん!の独自企画が好きだった」
「関西のニュースやスポーツはやっぱり地元の局じゃないと伝わらない」
番組では、終了直前の1週間(2025年9月24日~30日)を「す・またん!感謝祭」と題し、特別編成で15年間の歴史を振り返る企画が放送される予定です。さらに、最終回にはゆかりのあるゲストも登場し、スペシャルな企画が用意されているとのこと。
■ 関西ローカル番組の今後は?失われる“地域発信”の価値
「す・またん!」の終了は、単なる番組終了というだけでなく、地方局制作の番組が全国ネットに吸収されていく流れの象徴ともいえます。
今後、制作費削減を目的にローカル番組が次々と終了すれば、地域の個性や文化が全国放送に埋もれてしまう恐れもあります。
地元出身のアナウンサーや、関西ならではの笑いや情報を朝から届けることは、単なる“情報提供”以上の意味を持っていたはずです。
■ まとめ|「す・またん!」は終わるけれど…受け継がれる地域愛
- 番組終了の主な理由は「視聴率低迷」「経費削減」「編成の全国統一」
- 後番組は「ZIP!」の完全ネット放送に移行
- 地元情報の発信拠点が一つ減るという懸念も
「す・またん!」は15年間、朝の関西に寄り添い続けてきた唯一無二の情報番組でした。その終幕は、テレビ業界が抱える多くの課題や時代の転換点を象徴しています。
しかし、番組が残してくれた「地域を大切にする姿勢」や「視聴者との距離感の近さ」は、今後の番組作りにもきっと受け継がれていくことでしょう。
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