野球界の裏方でありながら、数々のスター選手に影響を与えてきた人物がいます。
その名は――矢田修(やた・おさむ)さん。
一見すると「治療家」や「接骨院の先生」といった肩書に見えますが、その実態はプロスポーツ選手の成長を陰で支える“身体知”の伝道師とも言える存在です。
特に近年は、ドジャースの山本由伸選手との関係が注目され、その名が一般層にも広まりつつあります。
この記事では、矢田修さんのこれまでの歩みや理念、そして山本投手との関係を、わかりやすく丁寧に解説していきます。
◆矢田修さんとは誰か?プロフィール・基本情報
- 氏名:矢田 修(やた おさむ)
- 生年:1959年(昭和34年)
- 出身地:香川県
- 職業:治療家、ボディワーク指導者、講演・教育活動家
- 主な肩書:
- キネティックフォーラム 代表
- Ip Select アドバイザー
- 矢田接骨院 院長
- NPO法人 スポーツ健康援護会 創設者
接骨院を経営する一方で、全国でトレーナー向けの講習会や勉強会を実施しており、その実践的かつ独創的な指導法には、プロアスリートや指導者たちから熱い支持が集まっています。
◆経歴の歩み:接骨院から全国的な指導者へ
1980年、矢田さんは自身の名前を冠した**「矢田接骨院」**を開業。
当時はまだ若干20代前半でした。そこから身体の機能性や自然治癒力に着目した独自の技術を構築していきます。
1988年には「キネティックフォーラム」を創設し、治療家・トレーナー・アスリートたちへの身体知(からだち)教育を本格化。
さらに1996年には「NPO法人 スポーツ健康援護会」を立ち上げ、社会貢献と若手育成に取り組む形に進化していきました。
これまでに矢田氏の元で学んだ指導者や治療家の数は全国に及び、プロ野球選手を含むアスリートとの交流も数多いとされます。
◆山本由伸との関係性:支柱となった“見えない力”
2024年に大リーグ・ドジャースへ移籍し、瞬く間にメジャー屈指のエースへと成長した山本由伸投手。
その進化の陰に、矢田修氏の存在がありました。
■出会いは高校卒業直後
当初はフォーム改造やトレーニング指導を目的として矢田氏のもとを訪れた山本投手ですが、矢田氏が提供するのは“技術指導”ではなく、むしろ**「身体をどう感じ、どう動かすか」**という根本的な身体操作の哲学でした。
山本投手はその深さに魅了され、やがて定期的に足を運ぶようになります。
「矢田先生の言葉がスッと入った瞬間、体の使い方が全く変わった」(山本由伸インタビューより)
■フォーム改造ではなく“自己理解”
意外にも矢田氏は、山本に対して投球フォームについての具体的な助言をしていないそうです。
それでも結果として、山本のフォームは大きく進化を遂げ、制球力や球速も格段に向上しました。
なぜなのか――それは矢田氏が重視する「感覚と内観(自己観察)」によって、山本選手自身が理想の動きを見つけ出したからだとされています。
■トレーニング観の変革
矢田修氏の方針で特に注目されるのが、**「筋トレ一辺倒からの脱却」**という思想です。
一般的に、現代の野球界ではウェイトトレーニングによる筋力強化が当然視されていますが、山本選手はそれをあえて行わず、「やり投げ」や「ブリッジ」など、身体の連動性を高める独自の練習法を重視してきました。
これはまさに、矢田氏の影響を強く受けた証拠と言えるでしょう。
◆Ip Selectと矢田修氏の関係
矢田修さんは、野球用具ブランド「Ip Select」の公認アドバイザーも務めています。Ip Selectは、プロ選手も愛用する高品質なグラブ・ミットのメーカーであり、技術的にも非常に洗練されたギアが揃うことで知られます。
矢田氏の指導哲学とIp Selectのブランドコンセプト「自然体でプレーを引き出す」が一致していることから、共同開発などにも関わっているとされています。
◆矢田氏が提唱する「身体知」とは?
「身体知(からだち)」とは、単に筋肉を動かすだけでなく、感覚・意識・経験値を統合して動作を生み出す力のこと。
これは矢田氏が最も重視する概念であり、以下のような哲学的な姿勢に基づいています。
- 「自分の体を知ることが、上達への第一歩」
- 「外からの指導ではなく、自ら気づく力こそ本質」
- 「スポーツは理論ではなく、感覚の総和である」
このアプローチは、今後のスポーツ教育や育成現場にも大きな影響を与える可能性があります。
◆著名な教え子は他にも?筒香嘉智とのエピソード
山本選手以外にも、メジャーリーガー・筒香嘉智が中学生の頃から矢田氏の指導を受けていたことが明かされています。
筒香選手は、矢田氏の“考え方”に触れることで、より主体的にプレーと向き合うようになり、それがメンタル面の成長にもつながったと語っています。
「自分の身体は、自分で育てる。だからこそ責任も生まれる」
――筒香嘉智(過去のインタビューより)
◆矢田修さんのSNS・メディア出演は?
矢田修氏のSNS(Twitter、Instagram)などの個人アカウントは公式には確認されていません。
ただし、YouTubeでの対談動画やキネティックフォーラムの講習映像など、活動の一部はネット上でも視聴可能です。
また、山本投手を特集した『山本由伸 常識を変える投球術』(中島大輔著)では、矢田氏との関わりが多く紹介されており、関係性や練習の様子を垣間見ることができます。
◆まとめ:矢田修氏がもたらす“見えない革命”
矢田修さんは、一見すると「裏方」の立場ですが、その存在はプロスポーツの最前線を支える知の巨人とも言えるでしょう。
彼の存在なくして、山本由伸のような“常識破り”のエースは誕生しなかったかもしれません。
“外から教える”のではなく、“内から気づかせる”――
矢田氏の言葉にあるこの本質的な姿勢は、スポーツだけでなく、教育、医療、そして自己成長においても通用する普遍的な価値を持っています。
今後、矢田修さんの哲学がより多くの人に知られ、次世代アスリートの育成に貢献していくことが期待されます。

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