2026年1月23日に放送された『探偵!ナイトスクープ』のあるエピソードが、SNS上で大きな議論を巻き起こしました。
この回では、広島県に住む小学6年生の男児が番組に寄せた依頼が紹介されました。
その内容は、「6人兄妹の長男として、自分の代わりに家事や育児をしてほしい」というものでした。
依頼文には、「友達は放課後に遊んでいるのに、自分は毎日弟や妹の世話をしている」「1日でいいから普通の子どもとして過ごしたい」といった切実な想いが綴られており、多くの視聴者の胸を打ちました。
一方で、その家庭状況や番組の取り扱い方をめぐっては賛否両論が噴出し、番組放送後にはSNS上でさまざまな反応が飛び交いました。
■ 家事や育児の“担い手”となる子ども
番組では、依頼した男児が洗濯、食事の用意、弟妹の世話を日常的にこなしている様子が放送されました。
母親は会社を経営しており、父親も仕事で多忙とのことで、家庭内のサポートが長男に集中している様子が浮き彫りになりました。
番組スタッフは彼の願いに応える形で、1日だけ彼を“普通の子ども”として解放し、代わりに家事や育児を担うサポートを行いました。
しかし、その演出の裏にある現実、すなわち「子どもが家庭の責任を負っている」という事実が多くの視聴者に衝撃を与えたのです。
■ ヤングケアラーとは? 社会課題としての背景
ここで注目されるのが「ヤングケアラー」という言葉です。
ヤングケアラーとは、法的には明確に定義されていないものの、一般的には「大人が担うような責任や世話を、家族の中で日常的に担っている18歳未満の子ども」を指します。
その対象は、高齢の祖父母の介護、障害や病気を抱える親の世話、きょうだいの育児補助など多岐に渡ります。
彼らは学校から帰宅後に料理・洗濯・掃除を行い、親の代わりに弟妹の面倒を見ていることも少なくありません。
そのため、学業や友人関係に支障が出るケースも多く、深刻な社会問題とされています。
日本では、2020年の厚生労働省による調査以降、徐々に注目が集まるようになり、地方自治体による支援体制も整備が始まりました。
しかし、未だに“家庭内のこと”として表に出にくく、適切な支援につながらないケースも多々あります。
今回の依頼者もまさに、ヤングケアラー的な役割を担っていた可能性があり、視聴者からは「彼に必要なのはテレビ番組ではなく、福祉支援なのでは?」といった指摘が相次ぎました。
■ 番組演出に対する疑問と社会の視線
『探偵ナイトスクープ』は依頼者の願いを叶えるという構成を軸にしていますが、今回はその番組演出に対する批判の声が目立ちました。
「子どもの苦労を娯楽として扱ってよいのか?」「深刻な家庭事情をバラエティで放送すべきではない」といった反応が多数寄せられました。
一方で、「子どもが助けを求める手段として番組を選んだことに意味がある」「これを機に社会的支援が進むべき」といった擁護意見も存在します。
実際、こうした番組が問題提起の契機となり、行政やメディアが社会課題に注目することも期待されているのです。
とはいえ、番組制作者側がヤングケアラーの問題をどこまで認識し、どのような意図で取り扱ったのかについての説明が不足していたことも批判の的となりました。
子どもの尊厳を守るためにも、演出や編集には十分な配慮が求められます。
■ 炎上を加速させた“両親のSNS投稿”
番組放送後、一部の視聴者が依頼者の両親とされるSNSアカウントを特定し、Instagramなどに投稿されていた内容が注目を集めました。
「子どもの負担が語られている一方で、親の投稿からはその実態が見えてこない」「反省の色が感じられない」といった見方も見受けられ、SNS上で批判が集中する形となりました。
しかし、SNSで見られる投稿は一部を切り取ったものであり、それだけで家庭の全てを判断することはできません。
また、実際にそのアカウントが該当する家族のものかどうかも明確な根拠はなく、憶測に基づいたバッシングがエスカレートする危険性も孕んでいます。
■ SNS誹謗中傷に対する警鐘
現在、SNSでは家族に対する否定的なコメントや投稿が見られますが、それらの多くが匿名でなされており、時に度を越した誹謗中傷へと発展しています。
両親への直接的な批判、人格否定、個人情報の特定といった行為は、当事者だけでなく、依頼者である子どもにとっても重大な精神的負担となる可能性があります。
こうしたSNSでの言動が子どもの成長や家庭の再建を妨げる結果につながることもあるため、私たち一人ひとりが冷静な視点を持ち、節度ある情報発信を心がけることが求められています。
また、法律的な観点からも、過剰な中傷は名誉毀損や侮辱罪に該当する恐れがあり、ネット上での言動にも責任が伴うことを今一度意識すべきです。
■ 最後に
今回の『探偵ナイトスクープ』の放送は、家庭の在り方、子どもの負担、そしてメディアの果たすべき責任について、多くの示唆を与えるものでした。
ヤングケアラーという存在が社会的にどれほど見過ごされているのか、そしてその支援体制がいかに未熟であるかが浮き彫りになったとも言えるでしょう。
問題の本質は、親を責めることではなく、支援を必要とする家庭にどう手を差し伸べていけるかにあります。
今後、教育機関や行政、メディアが連携し、ヤングケアラーを孤立させない社会づくりが強く望まれます。
そして何よりも、私たちがSNSなどを通じて、軽はずみな言動を控え、当事者への理解と敬意を持って接することが、より健全な社会への第一歩となるはずです。

コメント