2025年9月2日、サントリーホールディングスは、同社の代表取締役会長であった新浪剛史(にいなみ・たけし)氏の辞任を発表しました。このニュースは経済界を中心に大きな波紋を広げています。
辞任の直接的な原因とされているのは、新浪氏が個人的に購入した「あるサプリメント」に関して、警察の捜査対象となったこと。この“サプリ問題”に関連して、会見ではその詳細を問う記者の鋭い質問が相次ぎました。
しかしながら、サプリメントの製品名は一切公表されず、一部では「なぜ伏せられているのか?」という疑問が噴出。今回は、現時点で明らかになっている情報を元に、この一連の辞任劇を振り返るとともに、サプリメントを巡る不可解な点や企業対応の在り方についても深掘りします。
◆ サプリメントが捜査対象に?新浪氏が語った“認識の違い”
サントリー社の説明によれば、今回の事案の発端は8月22日、新浪氏本人から「警察による捜査を受けた」との報告があったことに始まります。
社内では即座に外部弁護士を交えてヒアリングを実施。その中で新浪氏は、「自分の認識では法律に違反しない範囲で、健康のために購入したものだった」と説明したとされています。
つまり、本人に違法性の自覚はなかったということになりますが、警察はその製品について何らかの疑義を抱いて捜査に踏み切ったことになります。
◆ 記者会見での緊張の場面:「なぜ商品名を明かさないのか?」
9月2日の会見では、**「そのサプリメントは何という製品か?」**という点に関して、複数の記者が追及する場面がありました。
記者側の主張はこうです:
「新浪氏が摂取した製品がサントリーの商品でないことは書面で明記されている。だが、それ以外のメーカーに対して疑いを向けるような状況になっていないか? せめて製品の効能などを明らかにすべきではないか?」
これに対し、サントリーHD副社長・山田賢治氏は次のように回答しています:
「該当製品に関しては、捜査中であるためコメントは差し控える。ただ、社内ではヒアリングを通じて詳細を把握しており、我々の商品でないという事実を文書に明記した理由は、誤解を避けるためです」
一方で、「他社の商品に風評被害が及ぶ可能性への配慮が欠けていたのでは?」という指摘に対しては、「一般的に知られた商品ではなかったため、その懸念には至らなかった」との回答にとどまりました。
◆ 商品名・成分・効能は一切不明──見えてこない「中身」
現在、サプリメントの具体的な商品名やメーカー名、成分内容については、一切公表されていません。その理由としては以下が挙げられます:
- 捜査が進行中であり、情報公開が妨げになる可能性
- 仮に誤報であった場合の風評被害を防止するため
- 関係各所との調整が整っていない段階であるため
しかし、この“匿名状態”によって、「サントリー以外のサプリメント全体」に不信感が広がることも否めません。
とくにSNSでは、「○○の製品では?」という推測が飛び交い、明らかに無関係な企業が勝手に巻き込まれる事態にもなっており、情報非公開による副作用が出始めています。
◆ サプリメント業界全体への影響も
今回の問題は、単に一企業の経営者の辞任という枠を超え、サプリメント業界そのものの信頼性にも影響を及ぼす可能性をはらんでいます。
なぜなら、サプリメントは医薬品とは異なり、成分表示や効能表示についての規制が緩やかであり、製品によっては微妙な法解釈のもとで販売されているものも存在するからです。
そのため、今回のように「適法だと思っていたが、違法性を問われた」というケースが出ると、消費者の不安が一気に高まるのは当然の流れです。
サントリー社が自社製品でないことをわざわざ明記したのも、そうした製品ブランドの保護が理由でしょう。
◆ なぜ新浪氏は自ら辞任を選んだのか?責任あるトップとしての判断
新浪剛史氏といえば、ローソン社長や経済同友会の代表幹事など、長年にわたって日本のビジネス界で影響力を持ってきた人物です。サントリーHDの経営にも深く関わり、企業グループ全体の成長戦略を牽引してきました。
そんな人物が、なぜ今回、自らの意思で辞任を申し出たのでしょうか。
関係者の話を総合すると、ガバナンス(企業統治)の観点から自ら責任を取る決断をしたとみられます。
辞任発表に際して、会社側は次のように述べています:
「この問題は極めて重大なガバナンス上の懸念事項であると受け止めている。企業としての信頼回復を最優先に考え、今回の決定に至った」
つまり、たとえ違法性がまだ確定していない段階でも、「疑念が出た時点で身を引く」という潔い対応を取ったことになります。
◆ 辞任後の役員体制と今後の経営への影響
サントリーHDでは、これまで佐治信忠氏と新浪氏による2人体制での代表会長職を敷いていましたが、今後は佐治氏1名が会長職を務める形に戻るとのこと。
今回の辞任により、企業イメージや業績への影響が懸念されており、特に株主や取引先への説明責任が問われるフェーズに入っています。
また、ヘルスケア・サプリメント事業を持つ他社からは、今回の件が**“消費者の離反”につながらないよう注意深く見守られている状況**です。
◆ まとめ:情報を伏せる「正しさ」と「危うさ」の狭間で
今回の騒動において、明らかにされたのは以下の3点です:
- 新浪剛史氏は、自身が購入したサプリメントに関して捜査を受けた
- そのサプリメントはサントリー製ではない
- 商品名や成分などは非公表のまま
企業としての法的な判断や風評被害の防止策として、“非公開”という対応は一定の理解を得られるかもしれません。
しかしその一方で、情報の不透明さが逆に信頼を損ねる可能性も否定できません。
今後、サントリー社としても、消費者・取引先・株主に向けて、より透明性の高い対応を取ることが求められるでしょう。
◆ 今後の注目ポイント
- 捜査の進展による製品名や詳細の開示があるかどうか
- 新浪氏の再登板や社会復帰の可能性
- 他企業への波及や、業界全体のガイドライン見直し
【追記】
サプリメントは「CBD」だったようです。
サントリーホールディングス(HD)会長を辞任した新浪剛史氏は、自身で購入したサプリメントは、合法の「CBD(カンナビジオール)」だと説明した。CBDは大麻草由来だが、有害だとされておらず、厚生労働省の大麻規制に関する小委員会による2022年のまとめによると、欧米を中心に、リラックス効果をうたう食品やサプリメントの市場が急拡大している。国内でも販売されている。
新浪氏 購入サプリ「CBD」と説明 - Yahoo!ニュースサントリーホールディングス(HD)会長を辞任した新浪剛史氏は、自身で購入したサプリメントは、合法の「CBD(カンナビジオール)」だと説明した。CBDは大麻草由来だが、有害だとされておらず、厚生労働省
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