2026年の箱根駅伝、復路5区――それは、ただの記録更新や順位変動にとどまらず、一人のランナーが見せた「人間味溢れる表現」が話題を呼んだシーンだった。青山学院大学のエースであり主将でもある黒田朝日選手が、早稲田大学の監督車を追い抜く瞬間に見せた**“ガッツポーズ”**。それは、笑顔と共に「ちょっとしたノリ」で生まれたと言うが、その裏側には彼の成長、想い、そして周囲への敬意がにじんでいた。
本稿では、この一見「軽やかな仕草」の背後にある心理や、駅伝という過酷な舞台に立つ選手たちの人間ドラマを掘り下げていく。
黒田朝日という男:静かな情熱を秘めた主将
岡山県・玉野光南高校出身の黒田朝日選手は、入学当初から「山登りに強い」と期待されていた逸材だ。だが、才能だけで注目されたわけではない。仲間を大切にし、常に“チームとしての勝利”を最優先にする姿勢が、青学の主将にふさわしいと誰もが認めた。
そんな彼が、最終学年で挑んだのが、勝負の箱根駅伝だった。
“怪物”と称された5区の走り
山の5区は、標高差が激しく「山の神」と呼ばれるランナーたちがしのぎを削る難所だ。今年の大会で黒田が魅せた走りは、まさに伝説級だった。
順位が5位だったチームを一気に1位へと押し上げ、区間新記録を約2分更新という圧倒的な快走。その走りに、各大学の監督が驚きを隠せなかったのも無理はない。
ある監督は「化け物かと思った」、別の監督は「山の怪物が現れた」と車内でつぶやく。その驚きは、まさに“目撃者の本音”だった。
話題となったガッツポーズの瞬間
そんな中、カメラが捉えた“ある行動”が後日SNSなどで話題に上がった。黒田選手が、早稲田大学の監督車の脇を通過する際、助手席に座る花田勝彦監督に向かってガッツポーズを繰り出したのだ。
駅伝中にライバル校の監督に対し、笑顔で拳を突き上げる。そこには敵対心ではなく、**「感情の爆発」と「一種のリスペクト」**があったように見えた。
本人が語る“あの時の心境”
この“事件”について本人が語ったのは、日本テレビ系で放送された特別番組『完全密着!箱根駅伝 204台のカメラがとらえた歓喜と涙の舞台裏』の中だった。
俳優の和田正人さん(元日大陸上部)が「監督車を抜くときのあのガッツポーズ、どういう意図だったんですか?」と質問を投げかけると、黒田選手は少し照れたようにこう答えた。
「あれは…もう完全にテンションが上がり切っちゃってて、ノリです(笑)。なんかやっちゃいましたね」
このやりとりに、スタジオ中が笑いと共感に包まれた。
“ノリ”の裏にある深層心理とは?
黒田選手が「ノリだった」と語ったその仕草は、果たしてただの気まぐれだったのだろうか?ここで注目したいのは、彼が誰に向けてそのガッツポーズをしたのかという点だ。
対象は、早稲田大学の花田勝彦監督。かつての名ランナーであり、今は指導者として多くの若者を育てる名将である。その存在に対し、敬意の念や「見ていてください、自分の走りを」といったメッセージが込められていた可能性は否定できない。
また、全国放送されることを承知の上でのガッツポーズであるとすれば、それは自分の走りに誇りを持っていた証拠でもある。
父との“箱根リレー”が導いた境地
黒田選手の父・将由さんもまた、箱根駅伝を3度走った経験を持つ元選手である。法政大学時代、現役ランナーとして戦っていた父と、30年近い時を経て同じ舞台を走る息子。
番組内では、和田正人さんが「お父さんの走り方と似ている。天才肌ですね」とも評しており、その血を受け継いだ才能と努力が今回の快挙につながったことは間違いない。
まとめ:ガッツポーズは偶然ではなく、必然だった
黒田朝日の“あのガッツポーズ”は、本人が語る通り「ノリだった」のかもしれない。しかし、背景には次のような要素が絡み合っていたのではないだろうか:
- 積み重ねてきた練習と努力への自信
- 伝統校・早稲田へのリスペクト
- 家族の歴史を背負った走り
- チームを勝たせるという強い使命感
- 主将としての最後の見せ場という覚悟
駅伝という過酷な舞台で、全力を出し切った者だけが得られる「感情の爆発」。それが、あの拳に凝縮されていた――そう考えると、「テンションが上がってついやってしまった」その一言も、より深い意味を持つように思えてくる。
おわりに:また一つ、箱根駅伝に伝説が刻まれた
2026年の箱根駅伝は、黒田朝日というひとりのランナーの人間らしい一瞬によって、より印象深い大会となった。笑顔と共にガッツポーズをするその姿は、観る者の心に強く焼き付き、改めて「駅伝とは何か?」を考えさせてくれた。
熱くなれる何かを探している人へ――このガッツポーズには、きっとそのヒントが詰まっている。

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